赤とんぼの季節って秋のイメージが強いですよね。
でも実は、赤とんぼの一種、アキアカネは夏でも見ることができるんです!
娘たちの夏休みに高原のキャンプ場でバーベキューをした時のことです。まだ8月初めだというのにたくさんの赤とんぼが飛んでいました。
赤とんぼは秋の風物詩だと思っていた私はビックリです。
そのときは「今年はこんなに早く赤とんぼが出てきたんだ」なんて納得していたのです。でも、帰ってきて家のまわりや公園を見ても高原のキャンプ場のような赤とんぼの群れは見当たりません。
高原にはたくさんいるのに、平地にはいない赤とんぼ…。これは一体どういうことなのでしょう?
謎を解くために、赤とんぼの種類や性質、よく見られる場所と季節の関係など、赤とんぼの秘密を調べてみました。
この記事に書いてあること
赤とんぼってどんな種類のとんぼ?
実は「赤とんぼ」という正式名称のとんぼはいません。
私たちが「赤とんぼ」と呼んでいるのは、とんぼの中でも「アカネ」という種類の仲間全般をいう通称なのです。
そして、アカネの仲間でも特に「アキアカネ」のことを「赤とんぼ」と呼ぶのだそうです。
アカネの仲間の特徴
アカネの仲間は、正確にはトンボ科アカネ属といいます。世界中にはアカネの仲間がおよそ50種類もいて、日本では21種類が確認されています。ただし、専門知識がないと区別はなかなか難しいようです。
茜色(あかねいろ)は澄んだ赤い色のことです。とんぼのアカネも体の色が赤くなるのが特徴です。アキアカネの他には、タイリクアカネ、マユタテアカネ、ナツアカネ、ミヤマアカネなどの赤とんぼがいます。
茜色という名前ですが、驚いたことに中には赤くない種類のアカネもいるようです(黄褐色のノシメトンボ、青いナニワトンボなど)。名は体を表す…というわけではないようですね。
赤とんぼ「アキアカネ」はどんな種類?
赤とんぼの代表が「アキアカネ」です。頭の先からしっぽ(腹部)の先までの長さはだいたい3cm~4.5cmくらいあります。
赤とんぼと呼ばれていますが、実は赤いのは全身ではありません。羽は透き通っていて6本の足は黒です。頭や目、胸部は茶色・黄色・黄緑・黒といった色合いの部分がいり交じっています。腹部のところだけが鮮やかな紅色に染まり、それが非常によく目立つのです。
秋になると平地で群れになって飛んでいる真っ赤なとんぼが、このアキアカネです。「秋に飛んでいる茜色」のとんぼだから「アキアカネ」ということですね。
では、私が夏の高原で見た赤とんぼは、アキアカネとは別の種類のとんぼだったのでしょうか?夏に飛ぶから「アキ」ではなく「ナツアカネ」かも!?いえいえ、夏の高原の赤とんぼも同じアキアカネなのです。謎の答えはアキアカネの習性にありました。
赤とんぼの飛ぶ季節は夏それとも秋?
夏の高原にいる赤とんぼと、秋の低地を飛ぶ赤とんぼはどうやら同じ種類のアキアカネのようです。
アキアカネの大移動
アキアカネは大移動をする習性があります。暑い夏は山に飛んでいき、秋は低地に戻ってきます。他の種類のとんぼには、これほど極端に長距離を移動する習性はないようで、アキアカネの大きな特徴となっています。
アキアカネの一年
アキアカネは低地の水田や池で幼虫時代を過ごした後、5月下旬から6月にかけて水中から出てくると脱皮して、私たちのよく知る羽の生えた成虫のとんぼになります。
成虫になったアキアカネは生まれ育った水田や池を離れて、標高の高い涼しい場所へと大移動をします。暑い夏の盛りには20~25度くらいの避暑地でゆっくり暮らすということになります。
7~8月の間は山でエサをたくさん食べて成熟した赤とんぼに成長していきます。そして暑さのやわらいだ夏の終わりになると、集団で山から下りてくるのです。
低地に戻って来たアキアカネは交尾をして水田や池に産卵します。卵は泥の中で冬を越し、翌年の春、水田に水がはられる頃に幼虫になります。これがアキアカネの1年の暮らしです。
アキアカネは夏は山、秋は低地にいる
つまり、アキアカネは初夏から秋にいるとんぼなのですが、暑い時期は低地に住む私たちの身の回りから姿を消してしまいます。秋になって急に赤とんぼが増えたように見えるのは、夏の間は涼しい山で暮らしているためだったのです。
アキアカネを見つけたいなら、夏は山や高原などの標高が高く涼しい地域を探し、秋には低地の水田や池の周辺などを探すと、たくさん見つかりそうですね。
赤とんぼは初めは真っ赤じゃない!?
さて、赤とんぼが夏の高原にいた理由は判明しましたが、調べていた時に赤とんぼの秘密をもう1つ発見しました。実は赤とんぼは最初から赤い色をしているわけではないのです!知っていましたか?
赤とんぼは成熟するまでは赤くない
私が大雑把に調べたところ、未成熟な成虫は赤くなくて、黄色やだいだい色、黄色味がかった褐色をしている種類が多いようです。それが、夏の間に成熟すると赤みが濃くなって、鮮やかな赤とんぼになるのです。
赤とんぼのメスは赤くない?
オスとメスでも色の違いがあります。普通は赤くなるのはオスの方が多いのだそうです。メスはオスに比べると赤みが淡い感じであったり、赤くならず黄色っぽい褐色だったりします。
これはとんぼの種類でも色々違いがあるようです。また、体色は気温の影響も受けるということで、寒冷地ではメスは通常よりもっと赤みを増すようです。
アカネ以外の赤とんぼ おまけ
赤とんぼはアキアカネなどのアカネの仲間のことですが、アカネでなくても赤い色をしたとんぼも「赤とんぼ」と呼ばれることがあります。
例えば、ウスバキトンボはアカネの仲間ではありません。「薄い羽の黄色のとんぼ」という意味の名前の通り、羽は透明で、体は全体的に黄色っぽいうす茶色です。しかし、ウスバキトンボの成熟したオスは赤みがかった色になることがあるため、「赤とんぼ」と呼ばれます。
赤とんぼの季節は秋だけじゃない!?アキアカネの大移動 まとめ
私たちになじみ深い赤とんぼ「アキアカネ」は、秋になると平地で群れをなして飛んでいます。名前に「アキ(秋)」と付いているので秋にしかいないと早合点してしまいそうですが、実際は、赤とんぼは、秋だけでなく春や夏にもいることが分かりました。
「赤とんぼ」はアカネの仲間のとんぼの総称です。中でも特に「アキアカネ」のことを赤とんぼと呼びます。
アキアカネは長距離を大移動するめずらしい習性が知られています。暑い夏は低地から高原や山に住みかを変え、秋になると低地に戻ってきます。そのため、暑い時期には低地でアキアカネの姿を見ることはなくなります。
赤とんぼの成虫は、初めから赤いわけではなく、成虫として成熟すると真っ赤に色づきます。一般的に赤くなるのはオスの方で、メスは赤くならないか、オスほど赤くなりません。
さて、赤とんぼの謎の解明ができました。童謡で「夕焼け小焼けの赤とんぼ」と歌われるように、やっぱり秋の夕方が赤とんぼの季節のような気がしますよね。最近は秋の気配がしてきましたが、夏のキャンプ場にいた赤とんぼもそろそろ山を下りてくる頃でしょうか?